荒梅雨や父の盆栽入門書
赤々と生姜天ぷら喜雨の夜
自転車へ女座りをして夏日
羽抜鶏ふいにべニア板蹴って
夕端居チャルメラの音近づき来
辻水音
終電の出てゆく音や夏の月
夏の夜や眠薬足すを迷ひをり
妹よこの熱帯夜眠れるか
夕立雲血中酸素九十七
アイスティとなりに夫のゐる安堵
はしもと風里
モリモリと盛られ輝くトマトかな
田水張るソーラーパネルに囲まれて
青嵐するんと履けるスニーカー
道の駅あれば寄りたいかたつむり
立ちすくす夢の迷路や明易し
波戸辺のばら
朝涼し好きな私で歩く道
少し嫌いなあの子のおすすめソーダ水
金色の日の降り注ぐ夏の朝
仏像から吹いてきたのか青葉風
車椅子の高さに紫陽花の咲いて
林田麻裕
今生のこのひとときの生ビール
再会を約するハグや月涼し
耳穴に棲みつく猫の声梅雨入り
いつとせの猫の不在やマグノリア
真夜の豪雨まなうらのマグノリア
松井季湖
写真 季湖・マグノリア
河鹿鳴く暗闇にあるやすらかさ
夜明けまであと三十分ホトトギス
カラカラと夏の夜明けの自転車よ
歯を磨く台風の位置確かめて
紫陽花は雨の重さを持て余し
おーたえつこ
十薬を庭に育ててひきこもり
あと二分泣いてもいいよかたつむり
焼きあがるフランスパンの香り夏
雨蛙電話番号188
雨音がみどりの森に消えてゆく
たかはしすなお
学び舎のシングルハング蔦茂る
人恋の真夜を静かに半夏生
しゃべるのが好きやねん僕かき氷
六月号届くコップの水を飲む
真昼間の退屈がきて揚羽蝶
つじあきこ
写真 あきこ・賀茂川