冬めく 

  今年の夏は猛暑と言うより酷暑だった。11月上旬いや

下旬頃まで暑いだろうと覚悟していた。なのに、10月下旬

に急に寒い日があった。それから昼は暖かいが、朝晩の気

温が下がりいつの間にかクーラーを点けなくなった。紅葉が

色づかないので、まだ秋だろうと快適な日々を過ごしていた。

でも11月中旬頃からは、朝起きると寒くて窓や戸を閉めた

り、床暖房を点けるようになった。夕飯にお鍋料理の回数も

増えてきた。こんな時期を「冬めく」と言うのだろうか。もう少

し早い時期のことだろうか。

  そんな時に高校生時代のラインに訃報が流れてきた。三

年生の時に同じクラスだった。久しぶりに出席した同窓会で

見かけたが、高校生の時と変わらない体型の元サッカー部

の格好いいおじさんだった。前回の同窓会もわざわざ東京

から来て、穏やかなそして少し照れているような話し方が素

敵だった。来年の同窓会でも会えるだろうと思っていたのだ

が。我がクラスは出席者が少ないので貴重な人だったのに。

  冬めく時期にこんな訃報を聞くと、落ち込んでしまう。

 

    口に袖あてゝゆく人冬めける

        高浜虚子

    冬めくや双子のごとき禰宜宮司

        畑田保寿美

    冬めくやガラスの花のももいろも

            はしもと風里

               たかはしすなお

                                写真すなお・ヒメイチゴ


       はったい粉

 

子どもの時、よく食べた物は今でも好きだ。例えば海

鼠や心太など。海鼠はあまり見かけないし、まれにデパ

地下などにあっても、高価でなかなか手が出ない。

 昭和の田舎の子にとって、はったい粉は貴重なおやつ

だった。炒った麦を石臼で挽いて粉にしたものだ。それ

に砂糖を入れて鼻の頭を白くして舐めた。またお湯で

練ったのは喉が詰まった。はったい粉を食べたいと思い、

スーパーで探したが、見つからなかった。

 先日、伊勢丹に行った折、ダメもとで、富澤商店をのぞ

いた。若い店員さんに聞いたら、知らなかったようで、さっ

そくiPadで調べてくれ「麦こがし」という商品がヒットし

た。陳列棚まで案内してもらって、買うことができた。

 やっと手に入れた、はったい粉だったが、肝心の味は

ビミョウ。昔のような香ばしさがなかった。それはそうだろ

うなあ。手間ひまかけた出来立てを、食べていたのだから。

貧しかったが、ある意味豊かな時代に思いを馳せた。

 

       波戸辺のばら

 

            写真 のばら・麦こがし


季湖の11月の庭   写真 季湖

季湖さんの庭の花や紅葉黄葉など、色々な写真を送ってくれました。