野分晴れサバ定食ののぼり旗
赤とんぼ「警告」の柵すり抜けて
気まぐれに買うて柘榴の置き所
秋深しきちんとたたむ包装紙
台所の灯を消す柚子の香りかな
辻水音
月明かり言霊に守られてゐる
秋天や手のひらに長き生命線
赤くて小さき異国の林檎並びけり
虫の音を聴けるしあわせ夫とゐて
深秋の眠り深めるアイピロー
はしもと風里
コーヒーをゴリゴリ挽いて秋気澄む
自転車の籠いっぱいに林檎の香
掌にぷるんぷるんと新豆腐
酒盛りはお墓の前で天高し
秋澄んで芭蕉の墓の慎ましく
波戸辺のばら
写真 のばら・芭蕉の花
泥棒が謝りに来た秋の朝
枝豆やちょっとしゃがれたフランス語
銀杏黄葉工事の穴にひいらりと
爽やかやパン屋はドアを開け放つ
アンテナは団地にいくつ秋日和
林田麻裕
十月初めの穂谷の様子。緑のこんもりしたのは黒豆
写真 すなお・穂谷の朝
月光をはさみて今日の日記閉づ
装具の膝伸ばしたままに秋の庭
今さらに猫のゐぬこと秋日向
佇めば影の伸びゆく曼珠沙華
われよりもさみしきものに曼珠沙華
松井季湖
こっそりと桃食う真夜の台所
誰もいない店明るくて蚯蚓鳴く
新豆腐ぷかぷかと浮く桶静か
風葬の島から小鳥飛んでくる
温泉のもとかきまぜて秋思かな
おーたえつこ
虫たちの風葬人間の火葬
夜の香をこぼしておりぬ月夜茸
花嫁の化粧やわらか菊日和
青空へ登りつめたる秋の蟻
ひとつづつ好物さげて月の客
たかはしすなお
藪蘭の紫群れてひとりぼち
空晴れて角やわらかに新豆腐
レターパックに紅茶と秋の気配して
夕暮れて林檎切る音すっぱくて
放牧の島は国境秋日落ち
つじあきこ
写真 あきこ・パラグライダー
