恐竜のような浮輪にしがみつく
泳ぐよに踊りの中をゆく女
いわし雲歌声喫茶あった街
原爆忌まだ羊水に浮いていた
藍の空流れる星は華やいで
たかはしすなお
処暑の川テニスボールが飛び込んで
秋涼しポニテゆらして駆け来るよ
秋や肩組んで琵琶湖周航の歌
白桃や売り物件は島一つ
混みあえる駐輪場に虫の闇
辻 水音
ボディラインきゅっとしていて油照
星の数ちょっと気にして天道虫
枝豆の置いてきぼりの私かな
母のいた日の匂いして水澄んで
かなかなの木を焼く匂いかなかなかな
つじあきこ
写真 あきこ・東寺 五重塔
クローゼットに青の加はる葉月かな
夏空の青をたゆたふくぢらかな
秋暑し湖の青に染まりたし
終戦日父の手帳の文字うすれ
黙祷の夫の横顔終戦日
はしもと風里
爽やかや鴨川デルタで深呼吸
わたくしの二の腕ほどのさつまいも
バッタ跳ぶアメリカ人の大笑い
ダンス教室秋の風でも入れようか
眼鏡拭く仕草が好きよ秋うらら
林田麻裕
霊園を友だち追加雲の峰
再読の与謝野源氏に紙魚走る
「恋は水色」聴いてた頃の遠花火
声なき声聴く初秋の無言館
もう要らぬ猫のあれこれ夏の果て
波戸辺のばら
写真 のばら・里芋の花
八月の青空の奥飛行船
夕焼けのうみに恋ごころの波紋
カレーパンもちもち食うて月涼し
六才の抜けた歯めでて草田男忌
湿布薬ペリペリ剥がし残暑かな
おーたえつこ
写真 すなお・凌霄花
蝉わんわん哭く朝八時十五分
父として守宮をつまみ出す息子
ちちははを迎へる苧殻箸軽ろし
精霊棚幼なの好きなものあまた
おしよらいさん膝くづすこと許されよ
松井季湖
写真 季湖・盆の膳