きゅうり食うきみよ河童みたいだよ

 

ひし形になって雷みておりぬ

 

カクカクと脱ぎ捨ててある蛇の殻

 

ジャズ歌手の野太き声や熱帯夜

 

バンドマンアロハシャツ着てものしずか

 

  おーたえつこ

この腫れはただの蚊ではないとみた

 

七十歳台形体型のまま夏

 

悪戯は昼寝している母ちゃんに

 

鉾立ての手を止めパンに齧りつく

 

片陰やシャネルの5番と待ち合わせ

 

  たかはしすなお


 

週二日営むパン屋夏つばめ

 

先頭の蟻の戸惑い三角州

 

吊革にもたれて揺れて夕焼て

 

正論と曲論夏の大三角

 

つるんころんと逃げるトマトかな君は

 

   つじあきこ 

     写真 あきこ・宇治さわらびの道

               さわらびの一本松の新しい命 


蝉の声桜でんぶをちょと多め

 

銭湯の戦闘全開扇風機

 

正座する君の足裏よ藍浴衣

 

平米五十かなぶんを匿える

 

八朔や担架の脚のすくと立つ

 

  辻水音

すれちがふ四角のピアス涼しかり

 

初ピアス四角をえらび夏休み

 

日焼けせしタクトに託す金の猫

 

母の目で看てゐる夏風邪の夫を

 

夏風邪の夫よ愛よりビタミンC

 

    はしもと風里


紫陽花に小さな靴の忘れ物

 

ぽつぽつと猫の点滴半夏雨

 

夏空を全速力のアンパンマン

 

夏雲を跳ぶとび箱18段

 

あなたっていつも正論アイスティー

 

  波戸辺のばら

蝉時雨帰ってこいと言われても

 

扇子開いて土産話の続き聞く

 

立ち話終わったようだ水を打つ

 

Tシャツの可愛さ母に負けている

 

百日紅折れてなお花咲いている

 

 林田麻裕


 

向日葵や無理して笑はなくていい

 

向日葵のうしろ姿に力抜け

 

向日葵も眠りについてゐるだろか

 

抱き枕蹴つては抱いて明易し

 

ぎこちなく夫すりおろす夏大根

 

     松井季湖

     写真俳句 季湖