繭玉抄

林田麻裕

 

悪い人ではないけれど良い人のオーラもなくて会釈だけした

 

私の紡ぐ言葉って良い香りする? 小蠅がノート行ったり来たり

 

焼きそば屋の「営業中」は焼きそばとおしゃべりを売る時間なんです

 

どうしても聞きたいラジオ番組に間に合いバナナゆっくりと剥く

 

昼前の郵便局はすいていて局員のお腹もすいていて

 

歌仙「前髪を」の巻

                  連句部(おーたえつこ・辻 水音・波戸辺のばら・つじあきこ)  

                          消しゴム版画 辻 水音  

前髪をぱつんと切って薄暑かな       のばら

 青葉繁りて課外学習           水音

横綱は唯一無二と決意して         えつこ

 うどん巡りは王道コース         あきこ

月の宴職人の意地貫きぬ          のばら

 勲章もらい露の軒下           水音

ベランダに今日もきている尉鶲       えつこ

 アフタヌーンティー甘党の彼       あきこ

馴れ初めはイギリス行きの乗り継ぎで    のばら

 備蓄米買う列整然と           水音

丁寧な暮らし黙々山里は          あきこ

 「笑点」観つつメール読みつつ         えつこ


浪曲のさわりを唸り冬の月         水音

 煙草咥えてトレンチコート        のばら

菩提寺のあたりだろうか立ち止まる     あきこ

 心霊写真撮れてしまって         えつこ

椅子ひとつ置いて待ってる花の庭      あきこ

 釣り糸垂れて水面うららか        えつこ

来し方をたらたらぼやく遠蛙        水音

 女もしたいちゃぶ台返し         のばら

ステーキの鉄板皿のジュージューと     あきこ

 隣の家は百キロ先で           えつこ

雲峰にドローンが運ぶ胃腸薬        水音

 

 白い紫陽花棺に入れて          のばら


毎日をフルカウントで老人は        あきこ

 振り返ったら君のほほえみ        えつこ

シャンプーの香りただよう観覧車      水音

 もう逢わないとLINEブロック       のばら

月昇り狼男暴れだし            えつこ

 静かに新酒酌み交わす宵         あきこ

転がして草間彌生の大南瓜         のばら

 玄武神社の高き風の音          水音

マンションに笛や太鼓や囃やら       えつこ

 朝顔蒔いて井戸端会議          あきこ

レンチンでいいかなみんな花疲れ      のばら

 ゆびきりげんまん春の夕焼        水音 


季湖の虫活

      写真 季湖

 

5月半ば、複数の卵鞘からカマキリが孵化。
今年も虫活が始まりました。
孵化してしばらくは、蜘蛛の糸のようなものに団子状にぶら下がり傷んでちょっと黄色くなったシラスのようです。
程なく集団から一匹二匹と離れていくのですが、するともうあっという間に立派なカマキリのかたちに。

鎌だってあるんです。
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回目の脱皮で小さな蟻が、2回目ともなるとヨコバイを捕食することができるようになります。

風が吹けば飛ばされないか、雨が降れば流されないかと心配は尽きず、

今年もまたカマキリ愛は留まるところなし~~