夏の空すううううっと吸い込んで
風薫る帰ったらクラシック聴こ
あめんぼう眺める女子と取る男子
燕の子今のはあくびしただけか
夏鶯お前の願い事何だ
林田麻裕
コルセットはずして春の朝のパン
桜見に行くノルディックウォーキング
宝ヶ池ちゃぷんちゃっぷん散る桜
眠剤を飲みて眠れる春夜かな
春の夜の姉の彫りたる薔薇の盆
火箱ひろ
生業の包丁研ぐやけふ清明
囀や光る包丁小気味よく
春の夢覚めて腋窩の湿りかな
言はずもがな言ひて薄暮のぶらんこに
眉濃ゆく引いて行く春惜しむかな
松井季湖
写真 季湖・夕焼
梅咲いて喪服のほつれ気になって
東京は雨大阪は晴れ物種蒔く
ふり向かずゆく人たちよ菫咲く
運転が苦手黄砂に包まれる
三鬼忌の神戸の海の荒れ模様
おーたえつこ
天上のオオカミの影春ともし
見つめあう白ねこ黒ねこ恋のねこ
のどけしや円周率は3でよし
AIに薄墨桜の色伝え
キーボードカタカタカタン春の嘘
たかはしすなお
羽音のかすかな匂いチューリップ
花に遅れて桜餅六つ
ハンドルは十時十分空は春
スクランブル交差点です菜の花の
新しい帽子の匂い夏が来る
つじあきこ
写真 あきこ・見返りの桐(上賀茂神社)
真っ直ぐに前向く遺影春の星
春の昼父が文箱を開ける音
蟇出でてあらら!女性専用車
ユーホーキャッチャーに励む桜どき
ひとり来て椿の森のすべり台
辻水音
早口の聞き取れぬまま花の下
くもりぞら桜は凛と静まれり
争ひは苦手さくらに触れてみる
手ざはりでえらぶブラウス春の風
夏近し肩甲骨に羽生えて
はしもと風里
恋猫の赤いソファーにまどろんで
チューリップ恋の話を聞く役目
春の木に包帯巻いてあげたいな
口と膝しっかり閉じて入社式
喧嘩して春満月が潤んでる
波戸辺のばら
写真 のばら・オドリコソウ