可動域

 

年を取ると色んな所が緩む。涙腺が緩ん

で、涙もろくなる。私は子供と動物に弱い。

歯茎も緩むし、くしゃみをした拍子におし

っこが漏れたりする。

 そんな緩みとは反対に体はだんだん硬く

なって可動域はどんどん狭くなり、背中が

かゆくても手が届かないので、孫の手が欠

かせない。この孫の手は台所の出窓の開け

閉めにも役立っている。

 体の可動域は狭まっても、思考や心の可

動域は広くありたい。思考の可動域を広げ

ることに有効なのは、瓔の仲間とやってい

る連句。発想の転換や想像力を羽ばたかせ

て、噓八百の言葉の世界を転がしている。

これからもできるだけ、心の自由を保って

おおらかに生きてゆきたい。

 

      波戸辺のばら

                  写真 のばら・アスファルトのスミレ

 

 


歌仙「微笑んで」の巻

                  連句部(おーたえつこ・辻 水音・波戸辺のばら・つじあきこ)  

                          消しゴム版画 辻 水音  

微笑んで目礼かわす日永かな       のばら

 耕しにきて早お昼時          えつこ

新入生しりとりゲーム声あげて      あきこ

 犬に吠えられ列がぐちゃぐちゃ     水音

月光のマウンドに立つクローザー     のばら

 大盛りポテト小脇にかかえ       あきこ

冬支度あれもこれもとはかどらず     えつこ

 厚い胸板さわってみたい        水音

会いにゆくグレーヘアーを輝かせ     のばら

 乙女の夢は色褪せないの        えつこ

ゼンマイを巻く百年のオルゴール     水音

 削ぐように切るバウムクーヘン     あきこ

月細く万博会場夏兆す          えつこ

 アロハシャツには北斎の柄       のばら

大人びてポケットに指ひっかけて     水音

 音羽の滝の水を飲み干す        あきこ

舞台から笙聞こえくる花の寺       水音

 黒猫の仔ら路地をころころ       あきこ

魔女のキキほうきで飛ぶよ蜃気楼     えつこ

  裏千家への行儀見習い         のばら


揉みほぐすこむら返りのふくらはぎ    水音

 週二日だけ窯で焼くパン        あきこ

炉話のやなせたかしはそこにいて     えつこ

 なぜか右だけ失くすてぶくろ      のばら

見送りの母の袂に風はらみ        水音

 クッション抱いてきゅんきゅんしてる  あきこ

ケータイをこっそり見ては後悔し     えつこ

 魚影の跳ねる明神の池         のばら

月煌々シェフはフランス人らしい     あきこ

 金木犀の香の盛りなる         水音

雁渡る空の青さを引き連れて       のばら

 寝台特急呑み鉄がゆく         えつこ

ポスターの写真は父にそっくりで     あきこ

 蟻穴を出てラジオ体操         水音

花の下腹式呼吸たっぷりと        のばら

  孫の誕生山大笑い           えつこ


季湖さんの日々

     写真 季湖

 

声はすれども姿は見えぬカエルでしたが48日、遂にニホンアマガエルとお目文字叶いました。

でも翌日からまた少し気温が下がり、それからなかなか出会えません。
次に出会えたのは423日。アマガエルではなくツチガエルでした。

   夕焼の画像も送ってくれました。投稿に関係なくって書いてありましたが、

   綺麗な写真なので載せます。

春の雪

         

 415日に高校の仲間と高野山へ行った。

「高野山おでかけきっぷ」と言うお得な切符

でいくことに。それがデジタル切符なのだ。

入も決済もネットだ。「スルッとQRtto」から

メールで切符のアドレスが送ってきた。それ

を開けるとバーコードが出てきた。エッQR

コードじゃないの、何故。色々な疑問があっ

たが、開けたら使用済みになるのでどうする

ことも出来ない。

 当日恐る恐る「使用」のボタンを押したら、

QRコードが出てきた。それを改札口でかざ

したらバコンと大きな音が鳴り無事通過。改

札口を通る度にQRコードを新たに出す、早

すぎると時間経過で切れる。おばちゃんは邪

魔にならないように端っこで操作。未知の経

験をしながら高野山へ。この日は気温2℃で

途中大粒の真っ白いものが降ってきた。雹、

霰、いやいや春の雪だろう。

  約束を違へしごとく春の雪

      片山由美子

  信号の赤うつくしき春の雪

      おーたえつこ

  過去帳に余白たっぷり春の雪

      笹村恵美子

                たかはしすなお

               写真すなお・高野山